
『ラブ・ライズ』日本公開記念
来日舞台挨拶
2026年9月6日(日)
ヒューマントラストシネマ有楽町
香港映画『ラブライズ』(原題:我談的那場戀愛/英題:Love Lies)のホー・ミウケイ(何妙祺)監督とチャン・ヒンガー(陳慶嘉)プロデューサーが来日。2026年9月6日(日)、都内のヒューマントラストシネマ有楽町を訪れました。
舞台挨拶 採録(全文)
■日時 2026年9月6日(日)13:45-14:25
■会場 ヒューマントラストシネマ有楽町
■登壇 ホー・ミウケイ(何妙祺)監督 & チャン・ヒンガー(陳慶嘉)プロデューサー
■通訳 アンドリュー・ワン(汪人立/サロンジャパン)
■司会 松村江美子(サロンジャパン)
※以下は舞台挨拶における監督とプロデューサーのトークを書き起こし、内容を保ちながら読みやすい日本語に整えたものです。
# オープニング
司会:本作『ラブ・ライズ』は、一昨年の「Making Waves 2024」、昨年の「愛知国際女性映画祭」2つの映画祭での上映を経て、今年、一般公開を迎えました。今のお気持ちについて、まずホー・ミウケイ(何妙祺)監督(以下、監督)、続いてチャン・ヒンガー(陳慶嘉)プロデューサー(以下、陳P)より、日本の観客の皆様へ一言、ご挨拶をいただきたいと思います。
監督:皆さん、こんにちは(日本語)。監督のホー・ミウケイ(何妙祺)です。(本日は)ありがとうございます。
陳P:こんにちは。『ラブ・ライズ』のプロデューサー、チャン・ヒンガー(陳慶嘉)です。本日はお越しいただき、ありがとうございます。
司会:限られたお時間で少しでも多くのお話を皆様にお届けできるよう、本日は司会が代表してお二人にお伺いしてまいります。よろしくお願いいたします。
それでは、事前に用意した質問をいくつかお二人に投げかけていきたいと思います。
# Q1 札幌ロケについて
司会:まず何といっても、札幌という街が非常に美しく描かれているところが、この映画の大きな見どころかと思います。この作品は、当初、東京での撮影が予定されていたそうですが、予算の都合で札幌フィルムコミッションの助成金制度にたどり着かれたと伺っています。実際に札幌で撮影をしてみていかがでしたか。
監督:東京はご存知のとおり、とても忙しい街です。映画として求めていたのは、もっと明るくて穏やかな空気感でした。札幌の自然が、二人が出会ったときに醸し出される雰囲気にちょうどいいと感じました。冒頭に出てきたフランス風の草原のシーンも、実は札幌で撮影されたシーンです。
ですが、東京も大好きですよ(笑)。東京でも、これまで(撮影監督として)映画を撮っています。都市の雰囲気を出したい映画は、予算に余裕があれば、東京で撮影すると思います。
司会:札幌ロケで印象に残っているシーンはございますか。
監督:札幌市電での撮影です。札幌の制作会社が協力してくれて、かなり年代物の電車(※札幌市電旧型車両〈244号車〉、2026年8月24日に惜しまれながら廃車となった)を用意していただきました。
撮影はすごく慌ただしかったですね。スクリーンではとても美しく、ロマンティックに見えているかもしれませんが――――二人が寄り添っているあのカットも、実はものすごく急いで撮っていて、反対側で「早く早く!降りて!」と皆が言っている状況でした(笑)。
# Q2 「互いに嘘をついている」という物語上の構造について
司会:それでは、ここからは作品の内容について伺ってまいります。ベロニカは25歳の看護師、ジョーは55歳のフランス人技師アランの役を演じていました。つまり本作は、「騙す側」と「騙される側」という単純な物語ではなく、お互いに嘘をついているという二人の物語でした。この「相互の嘘」という構造はどのように生まれたのか、またジョーの「善良な詐欺師」という人物像をどのように育てていったのか教えてください。
監督:恋愛は、最初は、皆、相手に良い印象を与えたいと思うもの。多少は自分を飾ってしまうものです。それがいわゆる「優しい嘘」というものです。でも、本当に心を開いて相手と向き合うようになったとき――――たとえ最初は自分を美しく嘘で包み込んでいたとしても――――最終的に好きになるのは、間違いなく本当の部分なんです。劇中で二人が相手を思いやっている部分については、本心から生まれた感情です。
どうして詐欺団の話を書こうと思ったのかは陳プロデューサーから解説していただこうと思います。
陳P:最初は(香港の)ニュースでロマンス詐欺団の摘発の話を聞いたんです。そのなかで、警察が現場で台本をみつけたという話を知りました。自分たちも台本を書く仕事をしていますから、映画の仕事がなくて、もし詐欺団に捕まってしまって台本作りを強要されたら、どんなことになってしまうんだろうと話を膨らませました。
ホー監督は、男女の主人公が恋愛の過程で一度も顔を合わせないという物語がとても好きなんですよ。
監督:だからこそ私たちは、この作品の中で、最後にだけ、本当の(出会いの)瞬間をあえて置いたんです。撮影中、サンドラさん(※主役ベロニカを務めたサンドラ・ン(吳君如))は「私の相手役はどこ」とずっと愚痴っていました(会場:笑)。もう一人の主役、MCチョン・ティンフー(張天賦)(以下、香港内での愛称MC)さんとサンドラさんのシーンは、全体の9割が別々の場所で撮影されました。
# Q3 登場人物のキャラクター設定について
司会:劇中、ジョアンが自分も天秤座であるにもかかわらず、ジョーに「天秤座、嫌い!」と言い放ったセリフが印象に残っています。以前、監督からは、登場人物、それぞれに星座が設定されているという面白いエピソードを教えていただきました。監督ご自身も天秤座だそうですが(笑)、星座占いにまつわる香港の文化について、また、ベロニカは何座の設定か、教えてください。
監督:私自身も天秤座ですが、ジョアンを天秤座にしたのは、この役を演じているステフィー(※ステフィー・タン(鄧麗欣))さんご自身が天秤座だということもありました。ちょっとした遊び心を加えつつ――――他の星座の方々を怒らせないように、という配慮もあります。それに、正直に言うと、私自身、天秤座って結構面倒くさい性格だなとも思っているんです(笑)。
監督:ベロニカは蟹座の設定です。彼女の役柄にちなんでいて、まるで硬い甲羅で自分を守っているようだけど、中身はとても柔らかい、ということを象徴させています。皆さんが星座にお詳しいかどうかわかりませんが、私自身はそこまで詳しくないんです。サンドラさんご自身の星座(アセンダント)は、確かおとめ座(乙女座)だったと思います。(※補足:8月2日生まれのサンドラ・ンの星座は実際はしし座(獅子座)。12星座占いから発展した13星座占い上は、ベロニカのキャラクター設定どおり、新かに座(蟹座)となる。劇場用プログラム参照)
#Q4 「夢を見出せない若者」というテーマと、大学での教鞭経験について
司会:劇中のジョーのように、詐欺師ではないにせよ、定職につけず夢も見出せずにいる若者というのは、香港の中では多数派なのでしょうか。また監督は大学でも教鞭を執られているそうですが、普段、接している学生さんの世代と、ご自身の世代(※年齢非公表)とで感じるギャップがあれば教えてください。
監督:実際、香港にもこういうタイプの若者は多いんです。自分の理想や目標が何なのか、はっきりわからない。でも、それは能力がないわけではなくて、ただ、まだ、自分がやりたいことを見つけられていないだけなんです。私が思うに、もし彼らが自分の得意なこと、自分が活躍できる場のようなものを見つけられれば、実際に自分が何をしたいのかを見つけられるはずなんです。
私たちはよく「理想」という言葉を使いますが、中には「自分の理想が何なのか、はっきりわかっている」と感じている人もいます。そういう人はすぐに行動に移せます。でも、私たちは「日本人には一生を懸けて何かに打ち込む人がいる」という話をよく耳にするのですけど――――彼らは一生をかけてひとつの職人技のようなことをずっとやり続け、やっているうちに自分がそれを好きになっていることに気づいた、ということがあるのではないでしょうか。時に人は、そんなふうにして自分の好きなことを見つけていくこともできるのだと、私は思います。
例えばジョーも、この話の中で彼の良さを挙げるとするなら、人を思いやる気持ちがあることです。彼はこの映画の後、おそらくボランティアなど、人を思いやるような仕事に就くのではないかと思います。
# Q5 監督とプロデューサーの出会いについて
司会:それでは、映画製作上の監督とプロデューサー、お二人の役割分担についてお話を伺いたいと思います。お二人がお仕事をご一緒されることになったのは、最初に、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
陳P:ホー監督に、自分の監督作の映画のリサーチを手伝ってもらったのが最初です。その後、その映画のノベライズ版を執筆してもらいました。一番大事だったのは、彼女(ホー監督)が「書きたい」という気持ちを持っていたことです。彼女には素晴らしい創作の才能があると感じていました。ただ当時、彼女はこの業界の仕事をしていなかった。彼女が自分の(それまでの)仕事を辞めたときに、私は「脚本の仕事に興味はある?」と聞いたんです。彼女はとても気持ちよく引き受けてくれました。
ホー監督の特別なところは、女性ならではのユーモアのセンスがあるところです。他の香港の女性脚本家の中でも、なかなか見つけにくいタイプだと思っています――――女性の脚本家の中でも、もちろん男性の脚本家の中でも。
# Q6 新人監督支援と香港映画界の継承の精神について
司会:ホー監督にとって、これが第一作目の長編監督作品となったわけですが、陳プロデューサーが監督に、香港政府の新人監督支援プログラム「首部劇情電影計劃」への応募を後押しされたことが本作の製作のきっかけとなったと伺っています。また、弊社が配給担当する同時上映中の『最初の半歩』についても、陳プロデューサーが新人だったスティーヴ・チャン(陳志發)監督を後押しされ、プロデューサーをお務めになられたと伺っています。陳プロデューサーが新人監督を後押しされる理由と、これからの香港映画界を背負う若手監督たちに伝えたいメッセージがございましたら、教えてください。
陳P:私がこれまで多くの新人監督たちを助けてきたのは、私自身が若い頃、多くの先輩監督たち――――ジョン・ウー(呉宇森)監督やツイ・ハーク(徐克)監督――――が、私たちを進んで助けてくれたからです。これは香港のとても良い精神だと思っています。次の世代の成長を後押しする、この精神を私は受け継いでいるんです。香港のより多くの新しい世代の監督や俳優たちを、これからも助けていきたいと思っています。
# Q7 香港ロマンティック・コメディ(ロマコメ)の変遷について
司会:陳プロデューサーといえば、香港ロマコメの代表格( マスター)として有名です(陳P:笑)。今週金曜日から、キネカ大森では、陳プロデューサーの初監督作品である『恋するブラジャー大作戦(仮)』の再上映が始まります。ラウ・チンワン(劉青雲)さんとルイス・クー(古天樂)さんがダブル主演のこの作品は、2001年製作の作品ですが、そこから2026年までの25年、四半世紀の間に、香港のロマコメの潮流もかなり変わってきているように感じます。香港映画の中でのロマコメ、ラブコメの位置づけを、歴史的な側面も踏まえて教えてください。
陳P:私が2001年に撮った――ちょうどあの時代の《絶世好Bra》(※邦題:『恋するブラジャー大作戦(仮)』)ですね。香港のロマンティック・コメディは、長らく男性目線から作られることが多かったんです。もしご興味があれば、皆さんもぜひこの作品をご覧ください(笑)。この20年余りで大きく変わったと思うのは、男性目線から、少しずつ女性目線でロマンティック・コメディが語られるように変化してきた、ということです。
# Q8 タイトル『Love Lies』の由来について
司会:ルイス・クーさんのお話が出ましたので彼の出演作関連で――――本作『ラブ・ライズ』には『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』でアチャッ(阿七)役(※九龍城砦内の「阿七冰室」の店主役)を務められたキュウ・ジェンフ(喬靖夫)さんからも推薦コメントをいただいています。「『Love Lies』のライズ(Lies)には2つの意味がある」という非常に興味深いコメントでした。この『Love Lies』という英題に込められた意図について教えてください。
監督:最初は、シンプルな二つの単語を組み合わせただけでした。LOVE(愛)と LIES(嘘)。この作品全体が「愛」と「嘘」についての物語だからです。
でも後になって、私たちの友人で作家の――――キュウ・ジェンフという、香港でとても有名な作家がいるのですが――――彼は英語がとても得意で、こう言ったんです。「実は "lie" という言葉には『寄りかかる、依存する』という意味もあるんだよ」と。その「依存する」という感覚は、まさに恋愛の中で私たちがいつも求めている感覚です。先ほどお話ししたように、「嘘」も恋愛の中にありますが、「依存」もまた、恋愛の中にあるものです。ですから、これは運命が選んでくれたタイトルでもあると思っています。
# Q9 原題《我談的那場戀愛》の意味について
司会:原題《我談的那場戀愛》を直訳すると「私のしたあの恋愛」というような意味合い になるかと思います。「私」とは誰なのか、また「あの恋愛」とはどの恋愛を指しているのか、教えていただければと思います。
監督:原題《我談的那場戀愛》の「私」の「あの恋愛」はどんなものだったのか――――先ほど陳プロデューサーが言及したように、女性の視点、まず、サンドラさん演じるベロニカの視点があります。でも実は、この物語には、両方の視点があるんです。MCさん、つまりジョーというキャラクターのほうも、最終的には「恋愛」をしました。「私のあの恋愛は、こういうものだった」と、実際には両方の視点があるんです。「あの恋愛」とは、この物語全体のストーリーのことですね。
# Q10 魅力的な脇役たちと、この映画が伝えたい「愛」について
司会:この作品には魅力あるサブキャラクターたちが大勢登場します。親からの愛を求めていた子供、ガソリンスタンド店員のリンもいれば、実の息子のようにジョーをかわいがる元カノのお父さんがいたり――――そこには様々な「愛」の形があるように思いました。これらの愛すべきキャラクターたちはどのように生まれたのでしょうか。
監督:まず、最も完全な「愛」のかたちは、ジョーとべロニカです。私とプロデューサーはどちらも、「恋愛は、もしかしたら、頭の中にこそあるのかもしれない」と考えています。だからこそ私たちがこの映画で描きたかったのは、頭の中でのコミュニケーション、頭の中での共鳴、共感なんです。実は、至高の恋愛というのは、これまでずっと頭の中にしか存在してこなかったのかもしれない――――自分自身が恋愛というものをどう受け止め、どう整理するのかということも含めて。
でも、私たちは、この作品全体を――――作品世界全体、登場人物一人ひとりの関係性の中に――――愛が息づくものにしたいと思っていました。例えば、元カノのお父さん、彼にとってはジョーがまるで自分の家族の一員であるかのような存在になっている――――もしかしたら、彼自身が肉親からの愛情に物足りなさを感じていて、それがかえってこの青年との関係の中で満たされている、ということなのかもしれません。まさに「父親」の役割ですね。
もちろん、他の登場人物たちの関係にもそれぞれ、いわゆる「愛」というものが体現されています。例えば、ジョアンという登場人物には、恋愛に対する数々のロマンティックな空想を抱かせています。劇中では、彼女(ジョアン)は恋愛をするたびにまるで別人のように変わる、と描かれています。彼女の恋愛経験はとても豊かで、その豊かさゆえに、創作(物語づくり)を通して、さらに多くの恋物語にのめり込んでいくのです。
監督:皆さんはもしかしたら、この作品には「悪役」がいないと感じるかもしれません。詐欺の話をしているにもかかわらず、です。詐欺を働く側の人たちのことも、なんだか皆、けっこう可愛らしいと感じられるのではないでしょうか。
私たちはよく、「創作というのは "What if"(もしも)だ」と言っています。もし、この世界が愛に満ちていたら、もし、もう少し人が善良だったら――――私たちはそんな世界を創り出したいのです。というのも、この物語を書いていたのはコロナ禍の時期で、この世界はあまりにも辛く、幸せではないものに感じられた。私たちは、愛にあふれた、温もりのある世界を創り出したいと思ったんです。
皆さんもニュースをご覧になっていると思いますので、詐欺を働く人たちは良くない人だということは、当然おわかりになっていると思います。でも、映画館に足を運んでいただいたときには――――少なくとも私とプロデューサーには、ひとつの目標があります。それは、劇場でこの2時間を過ごす間、皆さんの気持ちが少しでも晴れやかになってほしい、少しでも幸せになってほしい、ということです。外の世界がどれだけ大変であっても、この映画館にいるこの2時間だけは、せめてその2時間分の愛と温もりを感じていただきたいのです。
ただ、もし、誰かにああいったメール(詐欺のような連絡)が来たときはちゃんと気をつけてあげるように言ってくださいね(会場:笑)。
# クロージング
司会:突然「ソウルメイトが欲しい」と言い出すべロニカの元彼・アーサーや、20歳にもかかわらず将来を見据えて焦って結婚相手を探し、ジョーに苦言を呈するユミなど、本作には他にも魅力的なキャラクターたちが登場します。劇場販売用のプログラム、監督とプロデューサーのインタビューで、そのあたりについても取り上げておりますので、本日、聞き足りなかった部分は、ぜひパンフレットをご購入いただいてご高覧いただければと思います(会場:笑)。
それでは、お二人から、最後に一言ずつ、ご挨拶をいただければと思います。
陳P:私たちがこの映画を通して皆さんにお伝えしたいのは、「恋愛は信じるべきもの」ということです。そして、恋愛というのは、信じさえすれば、それは「本物」になる、ということです。
監督:今日は皆さん、本当にありがとうございました。皆さんにとって今日が楽しい一日になりますように。
# フォトセッション
Q&Aの後は、本作の象徴ともなったビールを片手に監督とプロデューサーのフォトセッションが行われました。

Photo by Miyoko Izumiyama/© 2026 Salon Japan Co.,Ltd.

原題:我談的那場戀愛/英題:Love Lies
2024年|香港|114分|広東語・英語・フランス語・日本語|カラー|シネマスコープ|5.1ch|映倫区分:G
活用:札幌市映像制作補助金 | 札幌フィルムコミッション支援作品
日本語字幕:最上麻衣子
配給・宣伝:サロンジャパン
公式サイト:https://www.love-lies-movie.jp
公式X:@loveliesJP
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